ルベン・ブラデス 「メティエンド・マーノ」

RUBEN BLADES "Metiendo Mano"
FANIA/500
皆さんはルベン・ブラデス(写真左)をご存じでしょうか? パナマ出身のこの人は、ニューヨーク・サルサの代表的な歌手であると同時に、ハリウッド映画にも役者として出演し、数年前にはパナマの大統領選挙にも出馬した、というものすごい人です。実は彼はパナマの大学で法律を専攻していた、いわゆるインテリなのですが、歌手を夢見てニューヨークに出て、最初はファニア・レコーズのメイルマンのアルバイトをしていました。ほどなくレイ・バレットのバンドに歌手として迎えられ、また、様々なアーティストに曲を提供するなどして、めきめきと頭角を現していきました(余談1)。そんな彼がウィリー・コロン(写真右)をプロデゥーサーにして、輝かしいソロ・デビューを飾ったのがこのアルバムです(77年)。はっきり言って何百回も聞きました。トロンボーン編成の太いサウンドも心地よく、オリジナル曲とスタンダード曲が見事にマッチした非常に完成度の高いアルバムです。
彼の歌唱力、インプロビゼーションの素晴らしさは言うまでもないのですが、特筆すべきは彼の作曲の才能でしょう。ポップなメロディーメーカーであると同時に、代表曲 "Pablo Pueblo"、"Juan Pachanga"、"Nuestra Vida" のような社会風刺を盛り込んだ歌詞は彼ならではのもので、サルサに新風を吹かせたといえるでしょう。彼の視線は常に世界を向いていて、せまいニューヨークのクラブ・シーンから脱却して、後に見事にメジャー・レーベルでのデビューも果たしました。その後の彼の活動を見ると、音楽シーンを媒体にして次のステップに行こうとしているのがわかり、人物の大きさを感じることができます。
レイ・バレット時代には、ライブ盤を含め2枚録音している。この頃の作曲は、エクトル・ラボーの "El Cantante"、ボビー・ロドリゲスの "What Happened?" 等。この "What Happened?" は後に "The Last Fight" という映画の挿入曲になったが、その時は彼自身が唄っている。この曲は酔っぱらいのホセのことを唄った歌だが、やはり社会風刺が込められていて、酔っぱらいをテーマにしたという点では "Juan Pachanga" と共通するものがある。